第15回インタビュー: なぜメガネにネガティブな印象があるのか

――今回はメガネに対するネガティブなイメージは、何処から生まれてきているのかについて、お話を伺えればと思います

興味深いテーマですね。

以前メガネと婚活について、ブログにも書いたことがあったかと思うのですが、時代によってはメガネをかけたらお嫁にいけないとか、メガネをかけている女性は就職できないとか、そういうことがありました。

現代だと、完全に差別ですけどね。

――そんな時代があったんですね。ですが、その差別はどこから生まれたのでしょうか?確か以前、宮さんはメガネを始めにかけた人の話をしていましたよね? 

はっきりとした証拠があるわけではないのですが、13世紀にイタリアで発明された説があります。

初期のメガネは顔に固定する枠や耳掛けがなく、手で支えたり、鼻にちょっと乗せる形だったようです。初期の使用者は、修道院関係者や僧侶などの学者さんだといわれていますね。

日本ではメガネが最初に伝わったのは、16世紀と言われてます。時代でいうと、今から500年ほど前、室町時代~戦国時代初期です。

当時、ポルドガルやオランダの商人・宣教師たちが長崎を通じてもたらした輸入品の1つがメガネだったんですね。

当時は一部上流階級の人のみが使う道具でしたが、明治以降に国内生産が活性化し、20世紀には福井県鯖江市が一大産地となり、生産が本格化。現在では福井県鯖江市が日本の眼鏡フレーム生産の約96%を占める国内最大のメガネ産地となっているんですよ。

少し話が逸れてしまいましたが、老舗のメガネ店さんというと、だいたい創業100年なので、「明治以降の国内生産が活性化した」というところと、つながってきますね。

――では、差別になるような、ネガティブな印象はどのような背景から生まれたのでしょうか?

歴史的には、メガネは「視力障害の象徴」「弱者のイメージ」と結びつけられることがあり、ネガティブに受け取られてきた側面があります。

また、15世紀ヨーロッパでは「魔力」「悪魔と結託」などの迷信と関連づけられて、偏見の対象になっていた記録もあるようです。

さらに日本社会では戦後の高度経済成長の時代、女性に「清楚で上品」「外見で好印象を与えること」が強く求められていました。そのためメガネをかけて顔の印象が変わることは、縁談や接客・事務職の面接でマイナス要素になってしまったんです。

実際、1960~70年代には「メガネ不可」「メガネ禁止」という募集を出す企業が存在し、働く女性が容姿の条件で評価されることもあったと伝えられています。

今では考えられないですよね……。

また、当時のレンズは厚く重かったため、顔の印象変化が大きく、「似合わない」「地味に見える」といったネガティブな声にも繋がったのでしょう。

こうした要因が重なり、メガネをかけることが就職・結婚の不利要素と語られる時代が生まれたんだと思いますね。

――メガネがファッションの一部になったのは文明開化があった明治時代ですか?

そうですね。日本では本格的にメガネがファッションの一部として意識され始めたのは、2000年代に入ってからだと思います。それまではあくまでも視力を補う道具としての印象が強かったですね。

でも、欧米ではもっと早くから、例えば1950〜60年代の映画スターたちがサングラスや太縁のメガネをおしゃれにかけていた影響もあり、ファッションアイテムとして定着していました。マリリン・モンローやオードリー・ヘップバーンなんかが象徴的ですね。

日本でも、ファッション雑誌やテレビで「おしゃれメガネ特集」が組まれたり、メガネ専門のスタイリストが登場したりして、徐々に「似合うメガネを探す」という文化が根付き始めました。

――話を少しだけ戻すのですが、メガネが「似合わない」という言葉が生まれたのはなぜだと思いますか?

「似合わない」という感情は、メガネをファッションの一つとして捉えているからこそだと思います。

「似合わない」と感じた人が出た時点で、メガネはファッションアイテムの一つになったといえるんじゃないかな。

――なるほど、ただ「見えるようにする」だけじゃなくて「自分らしく魅せる」ためのメガネへと変わってきたんですね

そうそう。今では、レンズの厚みを抑えられる技術や、デザイン性の高いフレームがたくさんあって、むしろ「かけたいからメガネをする」という人も増えてるんですよ。

昔のネガティブなイメージにとらわれず、現代のレンズやフレームに触れて、メガネをもっと自由に楽しんでいただけたら嬉しいですね。