――今回は少し視点を変えて、育児をしながら仕事をしている女性経営者としての考えを聞いていきたいと思います。結婚をする時から、子どもが生まれても仕事を続けようと考えていたのでしょうか?
いえ、そういうわけではありません。
妊娠をした時、私はすでにメガネ屋さんに勤めていました。接客も検眼もしていましたし、第一線で活躍していた状態です。
お客様もついていたので、私の大きなお腹を見て、お客様が「当分あなたとは会えなくなるのね、だったら今日メガネを買っていきたいわ」という言葉をかけて下さっていました。
そんな中で、私は切迫早産のため救急車で運ばれ、緊急入院になりました。
まだもう少し働けると思っていたのですが、入院したら、「もう出産までは病院から出られません」と言われ、その時点で退職をするか、育休を取るかの選択に迫られました。
ですが、メガネの仕事は土日に出勤しなければいけないことが予測され、そう考えると、お勤めと育児をバランスよくできる未来を想像することができず、一度退職をしてから、今後を考えた方が良いと思い、仕事を辞めました。
それから息子を無事出産し、退院。入院で体力が落ちているなか、育児の毎日が始まりました。出産から5か月が過ぎた頃、息子と散歩をしている時に、急に「この先どうしよう」という不安が襲ってきました。
育児をしていると、外に出るのは息子との散歩だけです。家の中にいたらおかしくなりそうで、毎日子どもを連れて散歩に行くとしても、同じ道しか散歩ができません。とても息苦しくなった時に主人から言われたのが、「専業主婦は向いていないね」でした。
その頃、主人が起業コンサルの人と話すことがあったらしく、私の話をしてくれました。すると、あなたの奥さんがこれまでしてきた経験を考えると、何かできるかもしれないよ、と言っていたと主人から聞きました。
――では、そこから起業を考えるようになったのですか?
そうです。自分が思いもしないタイミングでのスタートでしたが、子どもができる前は、そもそも起業をしたいと考えていたこともあり、それまで色々なことに取り組んできたので、出来るのかはわかりませんがチャレンジしようと決めました。
――その時は、平日にできる起業を考えていたんですか?
平日と言うよりは、自宅でできることで何かないかと考え、最初はECサイトを開いてみようとしました。
――それで前回のインタビューのお話に繋がっていくんですね。
そうです。ECサイトが、私が一番苦手な分野だという事が、実際にしてみてわかりました。チャレンジしてみないと気付きませんからね。
――仕事をしながらの育児で一番大変だったことはなんでしょうか?
私の起業の始まりが無計画だったため、保育園の準備をしていなかったところが一番大変でした。
在職中に起業することを計画していたり、産休後に復帰することを考えていれば子どもを預ける準備をしていたと思うのですが、私はそうではありません。
市や区の保育園は点数制になっており、点数の高い人から保育園に入れることができるというシステムになっています。私は産後に復帰するわけでもないので、入園するための条件を満たせていませんでした。
翌年の4月入園に向けての準備をしつつも、民間のところに預ける手配をし、民間の保育園に登録してから、起業のための行動を本格化させていきました。
――民間の保育園にはすぐに登録できたんですか?
そうですね。色々と調べて、最終的には4か所の民間の保育園に登録しました。週に数回、事前にこの日に預けることを約束してから預けられる場所、翌日急に仕事が入っても緊急でも対応してもらえる場所など。それぞれ用途は違いましたが、民間の保育園は市や区の保育園に比べると費用が非常に高いため、出費は辛いところがあります。
その時に、お母さんで起業をしている人たちの記事を読んだのですが、最初は収入からすると赤字スタートになると書かれていて、なるほどなと思いました。特に民間の保育園に預けている時は、そうなってしまうと思います。
ですが、やると決めたので、やりきるしかないという気持ちを持っていました。とは言っても、専業主婦で毎日お散歩するだけの日々も苦しかったのですが、仕事という仕事にもまだなっていないのに、生まれて何か月の子どもを預けるのも、精神的にきつかったところがあります。
子どもに対して申し訳ない気持ちもありました。保育園に子どもを迎えに行って、子どもの顔を見るのが、すごく楽しみで、感情的にはとても複雑だった時期だと思います。
――保育園の問題が終わった後も、両立は大変でしたか?
そうですね。仕事も順調になっていくと、時間がとられていくので大変でした。小さな子どもの命の責任は私にあるわけですから。ご飯をちゃんと作らなければいけないですし、まだ何も分からない小さな子どもだから教えてあげないといけないこともあるし、お母さんがいないとできないことが沢山あります。
幼い子どもは成長が早いので、毎年洋服のサイズは変わりますし、子育てしながら成長が喜びだったりもするけど、それを支えなきゃいけないというのは、仕事だけじゃなくて、常に子どもの方にも目を向けておかなきゃいけない、そのバランス、両立が大変ですよね。
――仕事の時間と、育児の時間がバッティングすることも?
もちろん、あります。
――その時はどうしていたんですか?
どうしていたんでしょう?(笑)
基本的には、仕事が軌道にのりはじめたら仕事優先です。リビングで子どもを遊ばせながら、パソコンを開いているという感じですね。ですが、子どもが病気やけがをした時は、子ども最優先というルールを自分の中で決めていましたね。
多少の病気は保育園に預けられるように、それが可能な保育園に預けていました。少々熱があっても、保育園に預けていたんですけど、子どもがSOSを出した場合は、仕事は休みにしていました。
振り返ってみれば、仕事の大事な局面で子どもが病気になることはありませんでした。私が休める時に熱を出したりとか、インフルエンザになったりしていたので、不思議だなっていつも思っていたし、子どもってそういうことできるんだなって思っていましたね。これって、ある意味、子どもとお母さんの阿吽の呼吸な感じにも見えていて。子どもは高校生になりましたが、それは今も変わらないと思います。
だから子どもが熱を出してSOSが来た時は、普段忙しくて中々時間が取れない分を挽回するかのように精一杯看病をしていますね。
――仕事と育児の両立をしていてよかったことはありますか?
ありますね。
塾や習い事、野球チームなどについていけることがあまりなく心苦しいと思っていたのですが、仕事で連れて行ける場所には、保育園をお休みさせて連れて行きました。普通では体験できないことを子どもにさせることができたんじゃないのかなって思っています。
以前、関西テレビに出演をした時は、子どももロケ先まで一緒に連れて行きました。他にも名古屋、埼玉や栃木などの出張の仕事の時にも、連れて行っています。ママさんたちとのコラボイベントは一緒に連れて行き、イベント中はまわりのパパさんたちに遊んでもらったりとか、面白い体験をしているのかなと思いますね。
振り返ってみると、土日にお勤めできないと思ってフリーランスを選択したのに、結局土日に一番仕事を入れているという結果になったのですが、この仕事が好きだから変えられませんし、そこを家族でどう乗り越えていくのか、どう乗り越えてきたのかというところが、今は面白く感じています。
私が土日にいないことで、主人に子どもを任せることになり、それによって男同士で過ごしていたりするので、それはそれで良かったのかもとも思っています。
――育児をしながらの仕事で、この仕事を選んでよかったと思うことはありますか?
私が仕事に夢中になってるところを、子どもに見せられている事が良かったと思っています。
スタイリストの勉強をしている時は、一緒に子どもとファッションを楽しめたりとか、帽子を選んだりしてました。カラーセラピーをしたり、スタイリングをしたり、メガネの仕事だけでなく、私の仕事の主軸にあるものは、全部子どもと一緒に楽しみながら来たと思っています。
――最後に、これから両立を考えている人への一言をお願いできますか?
直接子どもと話をする時間が少なかったとしても、お母さんが頑張っている姿を子どもは見ています。
常識に捕らわれないで、愛情の形はみんなと同じじゃなくて大丈夫です。
愛があれば子どもには伝わっているから、仕事は思い切ってやるしかありません。それはちゃんと未来に返ってきます。
私もまだ、途中ですけどね。そう思いますよ。