第13回インタビュー: 老眼を放置しているとおばさんに

――今回は老眼について話を聞きたいと思います。自分の老眼に気付くきっかけって、どういうのがありますか?
私の場合は、名刺の文字が見えにくくなったことがきっかけでした。以前は問題なく読めていたのに、ある時からピントが合わず、少し距離を取ると読めるようになったんです。
ですから、手元のものを無意識に遠ざけて見るようになったら、それは老眼のサインかもしれません。
――他にも気づくきっかけはありますか?
そうですね。暗い場所で文字が見えにくくなるのも特徴です。たとえば、雰囲気のあるレストランでメニューが読みにくいと感じたら、それも老眼の可能性があります。
――あれって、老眼が問題なんですか?自覚はないですが、若い時は見えていたってことですよね?
確かにそう思う方も多いですが、実際は若い頃には問題なく見えていたはずです。
老眼の原因は「目のピント調整機能の低下」で、それを担っているのが「毛様体筋」という目の筋肉なんです。年齢とともにこの筋肉が衰え、水晶体の弾力性も失われ、近くのものにピントを合わせるのが難しくなるんです。
――目の筋肉が衰えるとピントを合わせられなくなるというのは、近視とはまた違うんですか?
はい、近視は主に眼球の形状(眼軸長)が関係していて、筋肉の衰えとは直接関係ありません。老眼とは異なる仕組みです。
――ちなみに、目の筋肉って鍛えられないんですか?
はい、可能です。私たちのサロンでも「メンテナンスデー」に目の体操を取り入れています。続けることで、ピント調整を助ける筋肉の柔軟性を保つことができます。
普段は「目にも筋肉がある」と意識しないですよね。でも、実はしっかり筋肉があって、トレーニングもできるんです。サロンではまず、その基本からお伝えしています。

――なるほど。宮さん自身は、何歳ごろから老眼を感じるようになりましたか?
38歳ごろです。「これが老眼か!」と驚きましたね。知識としては知っていましたが、実際に体感するのはまた別です。それ以来、意識的に目のトレーニングを始めるようになりました。
Zoom会議用のメガネが3本、読書用が2本あります。それぞれ度数やレンズの種類を変えているんです。
――そんなに作るのってなぜですか?
視野の広さや用途に合わせて使い分けるためです。老眼が進むと、スマホもパソコンも楽譜も見えなくなる。距離ごとに必要なピントが変わるんです。
――視野の広さ?
分からないでしょ。どういうことか分からなかったので、私は20代の頃に老眼についてすっごく勉強をしました。その学びを実践して、今は楽しんでるんですが。
――老眼になると、視野も狭くなるということですか?
レンズの選択によっては。
若い時はピントを調節しているという自覚はないと思うんですけど、老眼が始まると、30㎝、40㎝、50㎝というように、近くが見えなくなっていくんです。老眼初期だとまだ30㎝ぐらいが不便と感じるぐらいですが、どんどん近くが見えなくなるので、スマホが見えない、パソコンが見えない、楽譜が見えないという風になっていきます。
――なるほど。ただ、老眼が始まったなと思っても、一般の人はすぐに老眼鏡を作ろうとは思わないと思うんですけど、宮さんはすぐに作ったんですか?
すぐに作りましたね(笑)
38歳にして初シニアグラス(老眼鏡)。

――老眼って、放っておくとどうなっていくんですか?
一番の問題は「疲れやすくなる」ことですね。老眼鏡を使わないことで進行が早まるわけではありませんが、無理に目を酷使すると頭痛や肩こりが起こることがあります。
私自身、45歳の頃に頭痛が頻発し、レンズを適切なものに変えたところ改善しました。老眼は病気ではありませんが、放置することで体の不調につながるのです。
――目の問題というか、身体の問題になってくるということですか?
そうです。老眼ってだいたい2、3年で進んでいくんですけど、私は45歳ぐらいの時に頭痛が起こりました。レンズの選択ができていなかったんです。これではダメだと思い、レンズを変えたら頭痛がなくなったので、やっぱりそういうことなんだなと思いました。
――頭痛はどういう痛さなんですか?
目の奥が痛いというか……
――目の奥?
目の奥が痛いというのは本当なのですが、これはなった人にしかわからない感覚です。目の神経は後頭部の辺りにあるのですが、人の感覚としては眼球の奥が神経と通じていて痛いと感じるので、目の奥が痛いという表現になるのではないかと思っています。
私の場合、老眼の進行具合と合うレンズにすると、目の奥が痛いという感覚も落ち着きました。老眼は病気ではないので、じわじわそういった現象が起こります。これぐらいなら大丈夫、大丈夫と思っているうちに、どこかで限界がきて頭痛に繋がるんだと思います。本当はその手前でレンズを合わせに来てほしいので、1年に1回ぐらい視力検査をしに来てほしいと、みなさんには伝えています。
――今回老眼をテーマにしたのは、宮さんの過去のブログを読んでいて「老眼からのプレゼント」というものがあったからなんですけど、どうしてプレゼントというタイトルにしたんですか?
老眼は自分を見つめ直す機会になるでしょ。私からすると、老眼は嫌だといつまでも言っている人たちの考えが分かりません。老いと戦っているだけなんですよ。でも、老いとは戦うものではなく、受け入れるものだと私は思っています。
老眼を認めた人が次に取る行動はというと、解決策に向けて行動を起こすので、とてもポジティブです。
――老眼鏡をつけると、おばさんになったとか、おじさんになったとか、そう思ってしまう人が多いからではないですか?
そうですね。老眼を認めることで年齢を受け入れることになる。それに抵抗がある人は多いです。でも私は「老眼=プレゼント」と考えています。自分を見つめ直すチャンスなんですよ。
老眼を受け入れて、対策を取る人は前向きで、若々しさすら感じます。むしろ、見えにくいのに老眼鏡をかけない姿のほうが「痛い」と感じられることもあります。
――宮さんの思う若々しさとは何でしょう?
前向きさ。前向きな人は表情が明るくなるので、若々しく見えるんですよ。
老眼だけではなく、メガネが似合わないと思っている人も沢山いますが、そういう人がサロンに入ってくるときは、とても暗い顔をしています。ですが、似合うメガネを見つけて、実際に鏡を見てもらって、「メガネが似合わないなんてことないですよね」と伝えると、明るい顔になってサロンを出ていくんです。

そういうお客さんをたくさん見てきたので、前向きな気持ちって大事なんだなって感じています。ですが、前向きな気持ちを手に入れるのは意外と難しいんですよ。ときには専門家の力が必要です。
例えば、老眼の原因が何なのか、どうして起こるのかを理解していなければ、自分でどう頑張っていいのかが分かりませんよね。そういう人にこそ、私のような専門家に聞いてほしいんです。
老眼鏡をかけたくないというのは、そもそもメガネが自分に似合っていないと思っていたり、老眼をつけるとおばさんになると思っていたり、自分が勝手にマイナスと結び付けているからです。「老眼」という言葉自体にも、問題はあると思いますけど。
――確かにそうですよね。
だから見えないことを認めて老眼鏡をかけるというのは、自分に優しくするというところにも繋がっている気がします。
――優しくする、ですか?
老眼が進行しているのに老眼鏡をかけない行為は、大げさに言うと自分の身体を超頑張らせている行為です。だから目の奥が痛くなるんです。痛くなるということは、身体が悲鳴を上げているということですから。でも適切なレンズを選択すれば、目の奥は痛くなりません。だから、老眼を受け入れて老眼鏡をかけるというのは、自分に優しくしていることだと思うんです。
――なるほど。老眼の初期の頃は、ちょっと見えづらいですむと思うんですが、中期というか、進行が進んできて、老眼鏡をかけた方がいいのって、何歳ぐらいですか?
人によって違うところはありますが、一般的には45歳から40代後半ですね。その年齢になると、かなり不便度は上がっていますから、老眼鏡はかけた方が良いです。
見づらさを感じ老眼鏡をかけるのを我慢して、いよいよどうにもならないというのが50代ですね。
そして、今のライフスタイルはスマホを見ますし、仕事でパソコンを使うことが多いですから、45歳ぐらいになっていれば、自覚症状はわりとあると思います。
――では最後に、老眼かな、でもそうじゃないかもと思いながら、老眼鏡をまだかけていない人に一言ください
ぜひ「メンテナンスデー」にいらしてください。気軽にお話しできる場をつくっています。視力のチェックやアドバイスも行っています。

老眼鏡をかけるのは「老いへの降参」ではなく、「自分に優しくする」選択です。見えないまま頑張るのは、体に無理をさせているということ。正しいレンズを選べば、快適に過ごせるようになります。
中々最初の一歩が出しづらいとは思いますが、土曜日の朝、ちょっと喋れる場所にしたいと思っています。予約がなくても遊びに来れるようにしたいとも思っていて、それは今企画中です。ぜひお楽しみに★心よりお待ちしております。
