第11回インタビュー: スタイリストとしての宮キヌヨとは

――今回はスタイリストとしての宮さんにお話を、お伺いしたいと思います。以前にも少しお話を伺いましたが、宮さんは子どもの頃からスタイリングに興味があったんですよね?

好きなことではありましたね。ただ、はまっていたわけではないんだろうというのはあります。専門学校に行ったわけでもないですし、お裁縫がすごい上手ってわけでもないですし、リメイクを自分でしていたわけでもなかったので。そういう部分に、コンプレックスを感じていたのだと思います。

――自分で作るところまで行かないと、はまっているとは言えないということですか?

そうですね。自分では何もできないと思っていたので、好きなんだけど、そこまで好きじゃないからできないんだというふうに自分に言い聞かせていたのかなと思います。

でも今になって振り返ってみると、大好きだった。大好きだったからこそ、人よりもこだわりは強かったんだろうなと思いますね。

――好きだけど、好きだと言えなかった葛藤があったというわけですね。でもそこを、大好きだと言えるようになったのはなぜですか?

はまって勉強ができたからです。

好きなことって、自然と吸収できるじゃないですか。スタイリングの勉強を始めた時は、難しいという気持ちもあったんですが、面白かったという気持ちもあって。楽しいし、自分の日常を明るくしてくれるような効果があったんですよね。そんな風に勉強ができたから、多少の葛藤はあるものの大好きだと言えるようになりました。

それに作る側にならなくても、今は色々なサービスがありますよね。お直しサービスみたいなところに持っていって、丈を変えてもらうとか。

――リメイクの指示出しはできたということですか?

できましたね。私の場合は高校生の頃からしていました。

丈が気に入らないと直したくて、裁縫ができる人の所に持っていって、こういう風に変えてほしいと何度もお願いをしに行っていました。

あと、私のおばさんが販売できるレベルのセーターを編む人でした。そのおばが、中学生ぐらいから毎年1枚、大学生になってからは2年に1枚編んでくれたんです。完全オーダーメイドのセーターなので、雑誌を見て、どういうのを作ろうかと想像を膨らませたり、糸のセレクトをしたり、模様の大きさを考えたりして、おばに伝えると、おばからも意見を貰えて、よりいいものを作っていくという経験をさせてもらいました。

おばに作ってもらったセーターは、今もお気に入りのセーターとして着ているものもあるんですよ。

そういうのを思い出すと、やっぱり昔から好きだったんだなと思います。今もワンピースや仕事で着る服をオーダーメイドで作ったりもしていますし。

――宮さんが自分の服を作る時は、どういうデザインを好んでいたんですか?

シンプルをエレガントに着るのが好きですね。

――その傾向は、歳とともに変わったりはしないんですか?

他の路線にチャレンジをしても、結局はここに戻ってきますね。シンプルをエレガントに着るのが、一番自分らしい姿だと思っています。

――なるほど。これまでの話は宮さんの服の話じゃないですか。他人の服に興味を持ち始めたのはいつぐらいからなんですか?

似合うメガネ診断をしている時とかに、お客様に聞かれて、それに対して答えたら、喜ばれたということがありました。

――似合うメガネ診断の時に、服のことも聞かれたりすることがあるんですか?

ありますね。トータルコーディネートという感じではなくて、メガネのついでに軽く聞かれる程度でしたが、そこがスタートだったと思います。そこから自然な流れで、スタイリングのお仕事を頂くようになっていきました。

――どのタイミングで、スタイリングの勉強をしようと思ったんですか?

人前に立つことが増えてきた時に、自分の洋服選びにすごく悩んだ時期があって、ストレスになっていました。この気持ちを解消するために、何かないかなと思って探してみたら面白そうなのがあったので申し込んでみたんです。そしたら、そこがスタイリスト養成のスクールだったんですよ。

――わかっていなかったんですか?

うん(笑)

入ってみたら、周りは洋服が人生の一部というぐらいの洋服好きな人ばかりです。私とは好きのレベルが違う。ですが、お金を払った以上は、辞めるかやるかの二択です。それなら、分からなくても最後までやった方が良いと思って覚悟を決めました。

そうやって勉強を始めるんですが、私がこれまで一生懸命してきた仕事の中でも感じていたことがリンクした時とか、教えられたことを理解した時に褒められる。すると、頑張ろうっていう気持ちが芽生えました。

この勉強をしてから、洋服に対する本質的な考え方を理解できて、自分の洋服選びがすごく楽になりましたね。

――洋服選びのストレスがなくなったんですね

はい。どういう考え方で服を選べばいいのかが分かったので、自分の仕事の洋服を考えるのが楽しくなりました。

それに元々興味を持っていた分野だったということを受け入れられるようになったというのも、大きな気持ちの変化でした。お洒落をして日々を過ごすことは、私にとってはストレス解消にも繋がっています。

――なるほど。では、お客様のスタイリングをする時には、何に一番気を付けていますか?

「らしさ」です。

私は骨格診断とか、パーソナル診断はしません。メガネを通じて、大人というのは型にはまらないものだと学びました。それでも考える基準は必要です。その基準を私は、個人の中にあるこだわりにしたんです。

それに人というのは、じぶんのなかのこだわりや内面的な部分を反映しないと、心が動かないものです。だからまずは、その人がどうなりたいのかを理解して、それからそれを表現するためのスタイリングを考えるという風にしています。

――ということは、似合うメガネ診断をしている時から、スタイリングの流れは出来ているってことですね

そうなの!

だから私の考え方に興味を持ってくださる方が、お客様として来て下さって、日常がすごく過ごしやすくなって頂けたら素敵だなと思ってアドバイスしています。

メガネを変えただけで、スタイリングが変わったという人も沢山いますよ。「ああなりたい」「こうなりたい」という気持ちが表面化したので、洋服を選ぶときの基準も自然と変わってくるからです。やはり何かを変えるとバランスが変わるので、イメージも変わっていきますよね。

サロンに来る人は、メガネを変えたくて来ているんだと思うんですけど、でも実は変えたいのはメガネだけではなくて、自分を変えたいという気持ちが強い人だと思っています。だから私は、どうやったら期待に応えられるかなと、毎回一生懸命考えているんです。

――変わりたいと思っている人の共通点ってありますか?

本人は気付いていないということです。

「私本当はこんなふうに変わりたいんです!」というような人ではなくて、心のどこかで変わりたいと思っている感情があって、それがメガネを変えてみようという行動に繋がっている場合がほとんどです。

だってメガネを変えるってことは、顔を変える覚悟をしてきているってことですからね。

――そうですよね、言われてみると

でしょ。だから私は、変わろうとしているその方の気持ちが、どこから来ているのかをカラーセラピーをしながら聞いていくという感じです。

――なるほど。メガネを一本変えると、その人本人が変わるじゃないですか。二本目を買った時にも、また変わったりするんですか?

変わります。ただ初回の方が変化は大きいですね。

お客様のビフォーアフターの写真を撮らせていただいているんですけど、最初に来られたときに撮った写真と、似合うメガネ診断をして新しいメガネになった時に撮った写真では、こんなに表情が変わるんです。

男性も女性も、一番初めに撮った写真は笑顔であってもぎこちないというのも、特徴的かもしれません。

――こんなに変わるんですね。

ビフォーの方の写真は、すごい自然に笑っているでしょ。私、メガネ似合ってるじゃんって本人も思っているからだと思います。

スタイリングの仕事をしている時は、その後はそのまま撮影になる事が多いんですけど、その時に本人のこだわりや愛着があるものが大事です。新しいものも大事かもしれませんが、愛着のあるものって身に着けるだけで、ご機嫌になれるんです。それは現場で見ていて面白かった部分でもあります。

――愛着となると、もう似合うとか似合わないとかではないってことですよね

そう。私の「似合う」というのは、笑顔になれるかどうかが大事なんです。この人が笑顔になるポイントは何処だろうっていうのを探していく。心の中にあるモヤッとしたものがなくなれば、誰でもスカッとしますよね。そしたら笑顔になるじゃないですか。そしたら笑顔になった顔に合わせてスタイリングをしていくと、どんどんご機嫌になっていくという感じです。

――なるほど。だからビフォーアフターの写真も、あんなに変わるんですね。

そうです。笑い方が全然違ったでしょ。アフターの写真の時には、みなさん何かを理解したんですよ。でもただ理解しただけではなくて、最初に「嬉しい」という感情がある。だから、自然な笑顔になるんだと思います。

思い切ってMyaMyaのドアを開けてみて下さい。