第9回インタビュー: 宮キヌヨが思う女性経営者

――今回は経営者としての宮さんにインタビューをしたいと思います。ジェンダーフリーの世の中では男が女がとわける必要はないと思うのですが、それでも男性経営者と女性経営者では何かが違うと思います。宮さんは、何が違うと思いますか?
女性経営者の場合は、思いから始まる人の方が多いかなと思います。
――思いですか?
何かを経験してとか、こういう人が困っているから助けたいとか、役に立ちたいとかっていう思いがある人の方が多い気がします。
起業をするきっかけは色々だと思うのですが、そういった何かしらの場面があったからこそという人が多いのではないでしょうか。

私の周りにいる女性の起業家は家庭を持っていて、自分のライフスタイルをどうしていくのかを考えた上で選択したという人が多いです。自分の生活を支えていくために起業したのではなく、またお勤めではなく起業を選んだというのも、何かやりたいことができて、思いが強くなってという流れなのだと思います。
――宮さん自身もそうですか?
元々起業に対しての興味はありました。ですが、何をするのかと考えた時に、私の中から出てきたのは縁があった眼鏡の仕事。元々現場にいて、眼鏡が似合わなくて悩んでいる人たちがいることを知っていたので、そこと向き合った時に、起業に対しての興味がさらに強くなり、こういうサービスが合ったらいいのではないかと考えて、起業をしたという流れです。
――なるほど。起業をした後は、どういう基準で物事を選んできましたか?
直観。
サイコロを振る感じです。
これはふざけているわけじゃないんです。でも、迷っている時に、奇数が出たらこっち、偶数が出たらこっちという風にして選んだことは何度もあります。
もちろん、選択を迫られた時に、これはこっちの流れに乗った方がいいと思って身を任せることもありますけどね。
――経営者の立場になると、選択を迫られた時って、男性の場合だと利益を一番に考えているのかなと勝手なイメージを持っていました。宮さんは女性だということもありますが、利益重視ではないということですよね?
そうですね。ただそれでも利益は運営するにあたって考えてはいます。一番初めに勤めたところが税理士事務所だったというのと、学生時代に簿記の勉強をしていたので、そういった所で培った知識は今に役立っています。

経営の学びはコーチングの先生にも、お願いしていたりします。この前は、コーチングで賞も取ったんですよ。
――どういう賞なんですか?
よく改善できましたというような、努力賞です。実はこういう部門も頑張っています。
――そうだったんですね。あまり、そっちのイメージがなかったので驚きました。
そうですよね。コーチングの先生にも、やり方がおもしろいって言われてました。
サロンにはスタッフもいるんですが、タイムカードを用意していません。
――タイムカードがないってことは、時給制ではないってことですか?
いえ、時給制です。ただ働いた時間は、自己申告制にしています。遅れたり、早く帰ったり、多少のことは自己責任で行うということです。
――なるほど、そういうことなんですね。確かに他の所ではなかなかないかもしれません。では少し話を変えて、女性経営者だからこその強みって何だと思いますか?
人脈。
お友だちがいっぱいいて、みんな一緒にランチをしています。ただ、ランチって遊びではなく、仕事をしているんですよね。いい意味で、プライベートと仕事の境界線がありません。それが上手く回ると、仕事にもいい影響が出てきます。
――女性経営者たちの人脈って、どうやって作っているのでしょうか?
ゼロの状態の時は、一歩勇気を出して交流会などのイベントに参加するというところから始めています。私の場合は35歳でした。そこから少しずつ繋がっていって、成長していったのだと思います。
一番長い人だと、15年ぐらいのおつきあいだと思います。
あとは同世代で仲良くしているコミュニティや、先輩方に連れて行ってもらって学ばせてもらっている場もあります。ただ私は、憧れている人の所に行って、話しがしたいという気持ちが強いので、60代、70代の先輩女性オーナーさんにご飯に誘われたら率先して行くようにしています。
――そうやって人脈を増やしていったんですね
そうです。あとは子どもにも感謝しています。子どもが小さい時は、一緒にお食事会にも連れて行っていたので、付き合いが長い人たちからは、「お子さん、いくつになったの?」と聞いてくださることもあって、とても嬉しいですね。
――宮さんが人との出会いの時に、特に心がけていることはありますか?交流会ではどう動くなど
行き続けるようにしています。
信頼関係って、そんなに簡単にできるものではないじゃないですよね。でもずっと同じ交流会や集まりに行っていると、同じようにずっと来ている人の存在に気付くことができます。するとその人も、ここに来る理由があって、話をしてみると何か共通点があって、気が付いたら長い付き合いになっていたということもあります。
同じ場所に通い続けることで、周りの人にも私のことを信頼してもらえるようになりますし、関係を構築していきたいと思える人とも出会えるようになる、ということです。ですので、ご縁があって参加したコミュニティでは、そういう気持ちで参加し続けるようにしています。
――なるほど。宮さんは自分で経営をしていくと決めた時に、人脈が大事だってことに、どの辺りで気づきましたか?
最初からわかってはいても、構築していく方法が分からないですよね。だからこそ長く行き続けることによって、無意識の自分が何かを掴んだんだと思います。日々の積み重ねの中で、人脈が何よりも大事ということを実感したところから、動き出しているんだと思います。
――では反対に、女性経営者の弱みってなんだと思いますか?
弱みは崖っぷちに立てないことだと思います。
生活に責任を負っていれば、そこが第一優先になります。極端な話、明日食べるものに困ってしまうわけですから。どんなに遅い時間になっても、仕事が第一優先。
ですが、家庭を持っていると、そうはいきません。母親の役目として、家族の健康を見守るというのがあります。家族も大事、でも仕事に対しても責任を負わなくてはいけないという時に、仕事の場面でもう一歩踏み出したくても出せない時があります。家族と仕事のバランスを取るのが、とても難しい所です。
そんな中で、外で仕事をすると「だから女性は」みたいな厳しいことを言われたりもするので、まだまだ難しい所だなと思いますね。
このバランスには、マニュアルもなければ答えもないので、自分で導き出すしかありません。そういう家族とのバランスを取らなくてはいけない立場は、圧倒的に女性の方が持っている人が多いと思うので、そこが弱みになってしまうことがあります。
仕事をしていても、6時に子どもを迎えに行くために、5時までに仕事を終わらさなければいけないのに、仕事も回さなくてはいけない、なんていう。本当はもう少し遅くまで仕事をしていた方が、もっと早く仕事が回ることが分かっているのに、です。
子どもがまだ小さい頃に、ちょっとずつ仕事を進めて私が1ヶ月かけてしたことを、他の人だったら3日で終わりますねって言われたこともありました。仕事に力を注ぐことができないのは、とても苦しかったですね。
――確かにそれはそうですよね。では、最後に宮さんが経営者として一番大事にしていることを教えて下さい
自分を大切にすることです。

お客様のことも、もちろん大切にしていますが、それだけでは自分の中から優しい言葉がでてきません。自分を甘やかせているわけじゃないんだけど、今まで頑張って来た自分、今頑張っている自分を大切にすることが何よりも大事だと思います。
――自分を大切にするというのを、どういう風にして行っていますか?
「よしよし頑張ってるな」とか、「その選択は間違ってなかったね」とか承認ですね。
子どもという選択肢が出てきた時に、子どもを優先すると仕事を休まなければいけない日が出てきます。子どもが熱を出した時とか。でも本当は、それを他人に言いたくないんです。それでも、究極の選択が来た時には、何を選択するって決めているので、仕事ではなく子どもを取った時に、自分に対して「よく選択できたね」って褒めてあげたりしています。
そうすることで、気持ちを前向きにすることができるし、仕事も家族も大事にすることができるんです。
自分のバランスの取り方、難しいけど永遠のテーマですね^^