第2回インタビュー:似合うメガネの難しさとは

――前回に引き続き、今回も似合うメガネ診断についてお伺いさせていただきます。似合うメガネ診断をしていて難しいと感じるときは、どういうときでしょうか?
人は誰しもなりたい姿が存在します。それを具体的にすることが、一番難しいところです。なぜなら、本人にも「なりたい姿」がどういう姿なのかを言えない人がいるからです。もちろん、自分のなりたい姿を明確に伝えられる方もいますが、伝えられない方の方が圧倒的に多いですね。
私がそう感じるのには理由があります。
似合うメガネ診断を行う時に、始めにお客様にアンケートに記入していただいているのですが、その中には「なりたいイメージ」を書く項目があります。ですが、その項目を空欄にする人が非常に多いんですよ。私の印象としては、8割ぐらいです。
――「なりたいイメージ」を自覚するためにはどうすればいいのでしょうか?
私の場合はカラーセラピーを使っています。
前回のお話にも繋がっているのですが、お客様自身も自分の本当の気持ちを自覚していないので、「なりたいイメージ」を人に話すことができません。

だからカラーセラピーを使いながら、お客様と言葉のキャッチボールをして、「なりたいイメージ」を引き出しています。
――カラーセラピーは、その人から深層心理を引き出すのに重要な役割を果たしているのでしょうか?
重要な役割を担っています。
お客様も含めてなのですが、みなさん、家庭のこと、仕事のことなど、様々なことで社会に振り回されているので、自分の気持ちと向き合ったり、考えたりする時間がないんです。
私の元に来られるお客様は、特に忙しい人が多いように感じています。
「なりたいイメージ」がある方は、私のところに来る前に、すでにメガネを探してきた事がある人が多いように感じます。他のメガネ屋さんで探してみたけれど見つからなかった、こういうイメージにしたいと思っているのにできなかった。でも、宮さんなら何とかしてくれるのではないか、という期待があるように思いますね。
――自分でメガネを探されたことがある人が見つけられないのはなぜなのでしょうか?
カウンセリングをしてみると、そもそも探し方が間違っていたケースもあります。思い描いているイメージになるためには、テクニックが必要です。ですが、ご自身で探されている方は、どうしても自分の好みで選んでしまうため、見つけられないというジレンマがあります。
――好みと「似合う」は違うんですね
違います。
いくつか候補のメガネを用意した後で、最終的に選んでもらう時は好みで問題ありません。ですが、最初から好みを優先してしまうと、似合うメガネにはならないことがあります。
――では反対に他人が似合っていると思っても、自分では似合わないと思ってしまうのには理由があるのでしょうか?
過去からの経験やトラウマの影響が大きいと思います。
私は今、眼科と提携していますが、そこには春になると眼科検診で引っかかったお子さんたちが沢山眼科に来られます。その中で、保護者が子どものメガネを嫌がる方が、今の時代でもたくさんいることを知りました。保護者がメガネを嫌がるのを見て、お子さんたちは自分にはメガネが似合わないと思い込んでしまうケースがあります。
もちろん、お子さん自身が嫌がっているケースもありますが。

他には、お友だちや会社や色々な場所で、誰かに「あなたはメガネが似合っていない」と言われたことがきっかけで、自分には似合わないと思い込まれているケースもありますし、ご自身でファッション的なところを含めて似合うものがどういうものかを分かっていないというケースもあります。
これまで多くの方の声を聞いていて、私が思ったのは、人は人生の中でメガネを大して選んでいないという事です。
お洋服、靴、バッグなどは、人生の中で一杯選んできていますよね。これが好み、自分のスタイルはこうだからこれが似合うだろう、とか、失敗を繰り返しながら選んできています。その中で、メガネを何本も持って、メガネを取り換えてきたようなライフスタイルを送っているかというと、送っていませんよね。
髪型やメイクや服装は、自分の考え方や好みが変われば変えているのに、メガネは変えていない。そういった人がほとんどだと思います。それだけ日頃からメガネに対して意識を向けていない証拠です。
だから、自分に似合うメガネが分からないのだと思います。
――少し話の方向性を変えて、これまで似合うメガネ診断をしてきて、印象に残っているお客様の話を聞かせていただけますか?
印象に残っているお客様は何人もいらっしゃいますが、始めに話すとしたら、強度近視のお客様ですね。
強度近視の場合、レンズも厚くなりますし、かけたときに目が小さく見えてしまいます。近視が強ければ強いほど、その傾向は強くなるため、メガネをかけたくないと言う、お客様がいました。
それまではコンタクトをつけていたのですが、眼科の先生に「もうコンタクトはダメですよ、メガネじゃないと」と言われ、メガネ生活になりました。私のところに来たのは、メガネ生活になってから1年が過ぎた頃です。
その方は、とてもお顔も小さい方でした。強度近視でお顔が小さいとなると、実際に選べるメガネの種類が少なくなるため、選択肢がほとんどありません。
――顔が小さいと、なぜメガネの種類が少なくなるのでしょうか?
靴で考えてみるとわかりやすいかもしれませんね。
大人の方で靴のサイズが20㎝や21㎝だと、あまり種類がありませんよね?
それと同じです。
もちろん子ども用のメガネであれば、かけられるものも増えますが、選ぶ側からすると子ども用のメガネは嫌だという方が多いです。また、子ども用のメガネの場合、メガネの横にある弦の長さが大人では短い場合があるので、すべての子ども用メガネをかけることができるわけではありませんけどね。
――強度近視のお客様とは、最初にどういったお話をされたのですか?

「どうして、メガネが嫌いなんですか?」という事を聞きました。似合わないと思っている理由を話して頂ければ、基本的に私の方で全てひっくりかえせます。そしてそこから、似合うメガネを見つけていきました。
このお客様も、最終的にはすぐにメガネをお買い上げいただき、その後5本くらいまでは買うスピードが速かったですね。そして、メガネがこんなに楽しくなるとは思わなかったと、笑顔でおっしゃっていました。
――似合うメガネ診断を受ける側に対して、どういう気持ちで来てほしいですか?
みなさん総じて、帰る時にはお顔が柔らかくなっています。その表情を見ると、2時間前に来られた時は緊張していたのだなと、気づかされることがあります。
変わりたいという気持ちをたくさん持って、私にぶつけてほしいですね。マイナス要素をプラス要素に変えた先に、似合うメガネがあるからです。
どんな言葉でも、全て受け止めさせていただきます。